電子書籍、電子雑誌の国立図書館での収集の経緯

電子書籍、電子雑誌等、電磁的媒体を用いて公表される出版物を電子出版物というが、電子出版物の献本は献本制度審議会の前身である献本制度調査会で最初の検討が行われた。

平成11年2月のことである。この検討に基づき電子出版物の内、パッケージ系電子出版物を献本制度の対象として定めた。ここで言われているパッケージ系電子出版物とは、有形の媒体に情報を固定した電子出版物、例を挙げるならばCD-ROMのようなものである。

一方、通信等により公表される、ネットワーク系電子出版物は対象とされなかった。ただし、紙の出版物と同様に有用なものについては契約等の方法で収集すべきとされた。
その後、国立国会図書館は、平成14年4月から個別の契約に基づいて、インターネッ上の情報を集め始めた。

転機が訪れたのは平成14年3月のことだ。国立国会図書館は急激に増加したインターネット上の情報を効率的に集め、保存するため新たなる献本制度が必要であると献本制度審議会に対し提案を行った。
その提案内容は簡潔にまとめると以下のとおりになる。
1、対象とされていないネットワーク系電子出版物を献本制度に組み入れること
2、それが無理な場合、今までも公式には対象とはされていなかったが命を受けて集めてきたネットワーク系電子出版物の収集範囲と方法について決めること

議論を経て、平成16年にそれらの事柄について答申が出された。
結果、到達義務と納入義務という納本制度の根幹制度を備えることが難しいため、ネットワーク系電子出版物は納本制度に組み込まれなかった。
提案の2の項目については考え方が示された。

注記
到達義務 出版物を国立国会 図書館に移転させること
納入義務 内容による選別を行わない網羅性および発行者に納入義務を課すること


この答申を受け、国立国会図書館は国民、権利者団体等に意見を聞いたが、民間のインターネット情報を収集することには理解が得られなかったとして、平成22年4月から国等の公的機関の提供するインターネット情報に絞って収集を開始した。

以上が経緯である。
見てもらえば分かるとおり、国立国会図書館にはネットワーク電子出版物を収集する制度を持っていない。それを改善するため、平成21年10月13日の第17回納本制度審議会に諮問を行った。今回の諮問は前回を受けて収集する対象を図書に相当する「オンライン資料」としている。第18回でこれに対して中間報告がなされ、第19回で出された答申は全会一致で採択された。

私見
なぜ、民間の理解が得られなかったのかといえば、それは個人に関する情報を公的機関が得ることに対する不安である。プライバシー保護の観点から反対されるのが当然だ。
これを払拭するためには最新の注意を持って情報を管理することを説明して、理解を得る必要があっただろう。だが認められるのは難しかったと思う。

参照資料
国立国会図書館月報7月 http://www.ndl.go.jp/jp/publication/geppo/pdf/geppo1007.pdf
国立国会図書館ホームページ (http://www.ndl.go.jp/)>国立国会図書館につ いて>納本制度>納本制度審議会http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/data/s_toushin_5.pdf

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