死の蔵書 書評

本好きなら有名な本だと思いますが、『死の蔵書』という本があります。この本の中には、いくつもの古い本が出てくるのですが、それらの本たちについて深く関わる古本屋、掘り出しやと言われるせどりをして生計を立てている人がこの本の主役です。

主人公は、警官でありながら本の愛好家として高い知識を持っていました。その知識を活かして、古本にまつわる殺人事件を解決していくという話です。

主人公にも立場の変化があって、多くの時間がたって事件は解決されることになることになったのですが、解決にいたるまでの道のりが時間がかかりすぎでスピード感に欠けると感じました。
本屋をやっていた作者の本に対する知識を余すことなく書こうという取り組みはわかるのですが、もうすこしストーリーの構成について配慮が足りなかったと思います。
途中からは、いったん事件から離れてしまうことにもなってさらに事件の解決から遠ざかり、いつ解決するのか不安になってきます。

ミステリーとしての出来はあまり良くはありません。それにはいくつか理由があるのですが、一番の理由として主人公である警官が真相を見ぬく能力が高くないことにあると思います。それが物語を不必要に長くしています。
魅力的な探偵役では明らかにありません。

本に関してのミステリーを書きたいのならもっとひねった物語の構造にしたほうが面白い気がしました。本に対する知識をたくさん書きたいのなら、そっちに重点をおいた物語を書くべきでしょう。
両者を同時に盛り込もうとして失敗したのだと思いました。

よかった点は、古本に対して面白いエピソードが知ることができたこと、古本屋、掘り出しやの生活を学べたことが挙げられます。
そちらに興味がある人は、楽しく読めると思います。

続刊もあるようなので、そちらではその点が改善されているのか読んでみたいです。