「GJ部」の最新刊を見ていて面白いなと思ったことがある。それは、新キャラクターである環(たまき)について十分な説明がされないままストーリーが進んでいくことだ。
彼女が「GJ部」に入部するときに何があったかは、巻の半ばである「タマのしつけ」で説明されているが、それ以前では単にタマという新入生が入ってきたということと彼女が入部した後の「GJ部」での活動が描かれているだけだ。
この唐突具合が変わっているなと思った。そもそも出だしから初登場のタマの独白で始まるという構成。
また、語り部である京夜を含めてみな克服すべき背景というものを背負っていない。なにかしら、ライトノベルの登場人物達は自分に対して嫌悪感を抱いていたり、コンプレックスを持っている事が多い。それらをいかにして、解決あるいは理解しながら戦ったり、前へ進んでいくことが多い中で珍しい。
どちらかというと「GJ部」という小説はその瞬間を描き出すことに重きを置いているのかもしれない。彼らが話している時間帯に密接した出来事を書いているともいえる。過去のことを考えず、今だけを描く。
だからこそ、会話が主体となっているわけである。心の動きを事細やかに描くのではなく会話している登場人物達を少し離れたところから何を話しているのかを作者が書き留めているような感じを受ける。
けれど、これは外人にとっては理解するのが難しいだろうなと思う。省略された言葉や彼らの考えている事を読み手は想像しながら補わなければならないからだ。それは、日本人以外では持っている共通認識が大きく異なるため単純に英訳しても外人には理解出来ないような気がする。
アクション物なら読むだけで理解しやすいが、よりそういった会話を想像で補いながら読むという要素が強いライトノベルは、もしかしたらそれが理由で外人にとって理解しづらいのかもしれない。
みたいなことを思っていた訳でした。しかし、こういう読み手に負担がかからないのが主流になるのかな。これからのライトノベルは。鬱っぽいのは既に受け入れられなくなってきているし、作家にとってはテーマの舵取りが難しそう。知らず知らずのうちに会話劇を読むとき僕たちは足りない説明を補いながら読んでいる。それでも補えない切れないとき、話が訳分からないと感じるのだ。
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