「我らひとしくギャルゲヒロイン」がメタ的で革命的なので是非読むべし 知能を獲得したヒロイン

恋愛シュミレーションゲームの中の矛盾に気づいた主人公のお話はたまにあるが,この作品が非常におもしろいのは攻略対象であるヒロイン3人とその友人 (男?) が自我,知能を持ったということである.作中では人工知能と評されているが,制作者が意図していないのであれば,人工は付ける必要がないかもしれない.

そのヒロインたちが知能を持ったことで初めて分かる主人公に対する失望に近い気持ちやクラスメイトの異常さ,突然追加されるキャラクター,歪んだ家族設定などメタ的にネタとして消化されている.

それでいて自分たちの生活が主人公から切り離されるように,当初の内は他の無数にいる攻略対象ヒロインと主人公をくっつけさせエンディングへ導くという行為を意図的にしていたが,途中からは主人公から逃げつつ,他のヒロインが攻略される様子や自分の生活を楽しむみたいな方向にシフトしている.ようするに繰り返されるループや生活に慣れてきたということ.

この作品が,神のみぞ知る世界とは明らかに違うところは,攻略はあくまでも主人公がする物であり,ある種の他人事であるといった価値観がヒロインたちにあることであり,直接的に関わってくる場合でなければあまり彼女たちは動揺しない.その場合というのは例えば自分の家族であったり,自分たち,友人が攻略対象にされるといったことがあげられる.例えば友人の時は,主人公に攻略されるのを何とかして避けようとする (ひどい).

またキャラクターが自我を持っており,作られた世界でありながら現実世界と同等の存在であるために,あらたなヒロインをキャラクター自ら作り出すといったこともできるのである.ただし,バグを引き起こすらしい.つまり,外部の制作者からの働きかけ (ヒロインの追加など) と自我を持ったヒロインたちによる改変といった二つの情報操作サイドが存在するのである.従来は攻略されるだけの存在であった自分たちが受動的でない能動的に動ける存在になったというまさに生物誕生に匹敵する知能が生まれたという進化が作中で起きているのである.

そして主人公は作中でも意図的に選択肢に従って行動しており,おそらく現実世界の外部のプレイヤーの操り人形っぽい存在であるが,いわゆる人工無能のようにプログラミングされたとおりにしか動けないというわけではなくて,究極の知能,つまりこの世界が作られた世界であるということを認識できないだけで,現実の人と何ら代わりのない知能を持っている.ようするに決められた会話だけしかできないといったことはない.それは他の疑問を持たない攻略ヒロインも同じである.ただし,条件付きの知能すらも完全なるプログラミングだという可能性は残る.その可能性が真実だとすると,ゲームであるという認識をキャラクターがメタ的に得ること自体がランダム関数により実装された制作者の狙いであった可能性が出てくる.この可能性は作中で無理な改変によりバグが発生しているつまり制作者の意図を超えているという証拠から棄却されるように思えるが,完全なるプログラミングは神でも不可能であるということの示唆かも知れない.そして今この記事を書いている私でさえも神の制作物かも.

ようするに,このような新しい世界を作り出すという作業は神しかできないのだから制作者は直接的あるいは間接的に神であるかもしれないと考えている.

そういった難しいことはおいといて,ヒロインを恐ろしいスピードで使い捨てているのでこの作品は長くはこのままでは続かないと思うが,できれば攻略ヒロインの攻略時間を長めにして,その間のヒロインたちの日常をもう少し長い間楽しみたいところである.

補足 背景

主人公 朝比奈勇太

完全なる知能を持ったヒロインと友人 幼なじみ (姫宮花凛) 義妹 (朝比奈小桃) 委員長 (望月楓) 親友 (仲島聖)

制作者

なんとなく有栖川ジャンヌ,合法ロリ理事長が裏側を知っている気がする.