実売部数晒しの件

出版社の社長が,自分たちの行動を正当化するために実売数を晒したという事件が起きた.

しかし,実売部数などは隠すべきものなのだろうか.実際オリコンなどの数字 (推定売上部数) は売上上位の作品ならば誰でもみることができる.そのランキングに載っていない時点でその数字よりも低い.また有料サービスに登録すれば誰でもより下位の数字まで見られる.

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出版社は販促として売れている作品の数字を使う.その数字は,大抵の場合発行部数であり実売部数よりも小さい.その数字は常に実態に即しているだろうか.より売れているように誇張して使っていないだろうか.そして発行部数を使うことを著者は許容してきた.

同様に印税率の件も下手すると契約書もないまま裏で進んでいる事案だ.印税率も業界的にまともな率ならば公開されるべきである.人によって幅があるならば,最低を表示して,経験を加味すると書けば良い.新人賞でも,賞金は声高に書くのに印税についてはまるで触れられていない.

印税率を公開することは,作家にとっては妥当な数値を知ることができるので仕事を受ける際の参考にできる.また出版社にとってはうちはしっかりお金を払っていますというアピールになる.これは作家に限った話ではなくて,クリエイター界隈全体に言えることだ.

IT界隈では,どれくらいの収入であるか個人で公表することはままあることであるし,ブラックになりやすいクリエイター界隈を清浄化するために情報が公開されていることは重要である.

こないだの打ち切りや原稿待ちなどの情報を開示してほしいと同様にセンシティブな情報になるのはもちろん承知している.なので,下位の作品の実売部数などは明かされることはないだろう.しかし,上位の作品に限って言えば発行部数ではなくて実売部数を使うべきであると思う.そして印税率は,前述の理由により広く公開したほうが良い.今回の件は,口約束で済まされてきた業界の悪い習慣が見せた闇の一端である.

参考資料


【DBD #414】エグい実売部数の話【出版業界の闇】

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