国会図書館館長が読書週間に選ぶ9冊

国立国会図書館10月号の月報に載っていた『館長が読書週間に選ぶ9冊』からその名のとおり要約をしながら9冊の本を紹介したいと思う。



○時間がない忙しい人に向けての2冊

1冊目は、桑原武雄著『一日一言――人類の知恵 』である。
1988年の初版発行当時、他にはなかったスタイルの本であった。そのスタイルとは、古今東西の哲人、文人、学者の言葉が引用され簡潔に説明されているというものだ。
一齣ごとに写真入りで紹介されている。

最近は、このスタイルの本はたくさん出まわっているが、最近のもので紹介するならば、興膳宏著『漢語日暦 』である。

○グローバルな物の見方のために 3冊

政治経済だけではなく文化の面までグローバルという言葉が入って来た。世界的な視野で物事を考えなければならないのであるが、それは我々が日常を過ごしている社会の持つ文化や特徴を他との比較という視点からよく検討したうえで、グローバルを考えなければならないだろう。

そういった点から考えると古典となった次の2冊がよいと思う。
3冊目、和辻哲郎著『『風土―人間学的考察』。4冊目、梅棹忠夫著『文明の生態史観』。
これらの本は、具体的なグローバル的な課題について考える時の基礎を提供してくれている。
戦後まもなく広く読まれた、笠信太郎著『ものの見方について』も読みやすく良い本だ。
(注 5冊目)


○ゆっくりと人生を楽しみたい人に 1冊

随筆集の元祖である『モンテーニュ 随想録』を6冊目として紹介する。様々な日本語訳が出ているがここでは、関根秀雄のものを紹介する。

随筆集を選ぶ際、重要なのは自分の趣味やその時の気持ちに合致したものを選択することだ。これだという本を見つけられたときの喜びは大きい。

○人物伝は面白い 3冊

歴史に残る人々の伝記は数多く出版されているが、彼らの話からは深く感銘を覚えることが多い。
理科系を目指していた自分にとって学生時代に読んだ河野麻里子訳『キュリー夫人伝』は涙なしには読めないものだった。

数学の人物伝で面白いのは、高木貞治著『近世数学史談 』だろう。決闘で死んだガロアの無くなる前夜の遺稿の話などが数学者である著者によって書かれている。

人物伝とは異なるが、デカルト著『デカルト著作集〈1〉』も一度は読んで欲しい一冊だ。

以上、国立国会図書館 月報10月 からの要約だった。