はじめに
令和5年度技術士第一次試験 専門科目 応用理学部門は以下の範囲から出題されている。
物理及び化学/地球物理及び地球化学/地 質
このうち地質分野(問題23~35)をとりあえず解説するものである。
解説
問題番号Ⅲ-23 正答番号3
金属鉱床は火成鉱床,堆積鉱床,変成鉱床に分けられる。火成鉱床にはマグマ性鉱床,ペグマタイト型鉱床,カーボナタイト型鉱床,熱水性鉱床がある。
- ◯。塊状鉱床以外はとりあえず正しい。塊状鉱床は,黒鉱型鉱床(多金属型塊状硫化物鉱床)といった海底噴気堆積鉱床のことを指すのならば正しいが,単に塊状とした場合,鉱脈,層状,鉱染,塊状というように鉱床の形態のことを指すはずなので熱水鉱床にとらわれなくなるはずだがどうだろうか。
- ◯。正しいが,斑岩は現在使用されないので半深成岩の例として斑岩を出すのは不適切である。
- ☓。黒鉱は海底火山活動の産物で新第三紀の火山岩,凝灰岩,泥岩中に形成されているが,あとからというよりも同時期に形成された。これらの火山岩(正確には凝灰岩)は熱水変質により緑泥石を形成し緑色となり,グリーンタフと呼ばれることから緑色片岩を問いとして出したのだろう。緑色片岩は広域変成作用ででき,日本だと三波川変成帯などが分布地帯としては有名である。
- ◯。正しい。手元の資料だと信州大学基礎理学教科書の「地球の科学2010」でしか記載が見つけられなかった。「地球の科学2010」の参考資料を見る限り,松葉(1992)の熱水の地球化学が大本か。岩手の釜石鉱山,岐阜県の神岡鉱山などが例。石灰岩が起源で,スカルン鉱床で形成されるザクロ石はCaを多く含有し,グロッシュラー~アンドラダイトがある。ザクロ石は通常等方体であるため,偏光顕微鏡下ではクロスニコルで常に消光するが,グロッシュラー~アンドラダイトは縞状の累帯構造が観察される。
- ◯。正しい。
参考資料
- 在田ほか(2015) 地球惑星科学入門 第2版北海道大学出版会
- 三宅ほか(2010) 信州大学基礎理学教科書 地学編第8版 地球の科学2010
題番号Ⅲ-24 正答番号5
- ◯。正しい。火成岩のようにマグマから鉱物が生じるわけではない。
- ◯。 正しい。ホルンフェルスは代表例。
- ◯。 正しい。
- ◯。正しいが,石灰岩が広域変成作用を受けたものも地質学では大理石(結晶質石灰岩)と呼ぶので,単に変成作用を受けたものを大理石と呼ぶとしたほうが問としては適切である。 火山学者に聞いてみよう -トピック編- http://www.kazan.or.jp/J/QA/topic/topic59.html
- ☓。逆である。広域変成作用により海溝に近い方には高温低圧型変成岩,火山前線(火山フロント)下には貫入したマグマによって低温高圧変成岩が形成される。前者は三波川帯の三波川結晶片岩,後者は領家変成岩が例。いわゆる都城の対の変成帯のこと。
対の変成帯 | 大鹿村中央構造線博物館 https://mtl-muse.com/mtl/aboutmtl/metabeltpair/
問題番号Ⅲ-25 正答番号3
- ◯。正しいが,ただ漠然と温度が上昇あるいは圧力低下して岩石が溶けてマグマが生じると理解するのは良くない。選択肢を参考のこと。中央海嶺では高温マントルの急激上昇による減圧溶融,沈み込み帯では高温マントルの上昇に伴う減圧溶融に加えて水による融点の低下が大きい。
- ◯。正しい。選択肢5のように溶けたマグマが集まり,浮力により上昇を開始する。
- ☓。間違い。低温ではなく高温。低温では減圧しても溶けない。
- ◯。正しい。
- ◯。正しい。固まるとマグマ溜まりの化石である花崗岩などの深成岩類が形成される。
問題番号Ⅲ-26 正答番号2
2の花崗岩が最も関係ない。
玄武岩は海嶺玄武岩,海台やホットスポットなど。プレートが移動し,石灰岩,チャート(放散虫など),泥岩などが堆積し,最終的に沈み込み付加される。炭酸塩補償深度(CCD)以深では海水中に炭酸カルシウムは溶けてしまい石灰岩が堆積できないことに注意。CCD以深でもチャートのもととなる放散虫などは溶けずに堆積する
問題番号Ⅲ-27 正答番号4
構造地質学(1998) 狩野・村田が詳しい。ページ数は上記の本より。手元に今ないが共立出版のフィールドジオロジーの構造地質学にも記載がありそうである。
- ◯。正しい。P19
- ◯。正しい。溶融-急冷組織がみられる。P123。
- ◯。正しい。紡錘形またはレンズ状の雲母フィッシュなどが形成される。P120。魚みたいな形状。マニアックでは。 岩石の変形構造を読む ―センスが大切― | 京都大学 大学院 理学研究科 地球惑星科学専攻/理学部 地球惑星科学系 https://www.eps.sci.kyoto-u.ac.jp/research/introduction/06/index.html
- ☓。正しくない。カタクレーサイトは基質と岩片が固結した断層岩であり,固結度ではなく破砕岩片と粉砕基質の割合で分類される。高木・小林(1996)による断層岩の分類では破砕岩片が>50%がプロトカタクレーサイト,10~50%がカタクレーサイト,<10%がウルトラカタクレーサイトP21。
- ◯。正しい。
参考 断層ガウジとマイロナイトの複合面構造:その比較組織学 高木・小林(1996) https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc1893/102/3/102_3_170/_article/-char/ja/
問題番号Ⅲ-28 正答番号2
- ◯。正しい。最近の定義が難しい。
- ☓。正しくない。A級は1000年あたりの平均的なずれの量が1m以上10m未満。B級は0.1m以上1m未満。C級は0.01m以上0.1m未満。 (活断層の)活動間隔、活動度 | 地震本部 https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_activity/#:~:text=%E6%B4%BB%E6%96%AD%E5%B1%A4%E3%81%AF%E4%B8%80%E5%AE%9A%E3%81%AE,%E9%80%9F%E5%BA%A6%E3%81%A8%E5%91%BC%E3%81%B0%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%EF%BC%89%E3%80%82
- ◯。正しい。正断層・逆断層・横ずれ断層 | 地震本部 https://www.jishin.go.jp/resource/terms/tm_fault/
- ◯。正しいといえば正しいが,正確には地表地震断層。
- ◯。正しい。長さとマグニチュード,ずれ(変位量)とマグニチュードには対応関係がある。
問題番号Ⅲ-29 正答番号1
最も関係が薄いのは1ラコリス。貫入岩体の形状の一つ。
問題番号Ⅲ-30 正答番号3
「堆積物と堆積岩」(2004) 保柳ほかが元か。ページ数は上記の本より。
- ◯。正しい。P107。
- ◯。正しい。洪水の初期には比較的細粒な物質が流れてくるため逆級化になると保柳先生から聞いた。P109。
- ☓。正しくない。網状河川システムの説明。P110。
- ◯。正しい。P118。濃尾平野など
- ◯。正しい。P121。
問題番号Ⅲ-31 正答番号2
最も不適切なのは2。ハンモック状斜交層理(HCS)はストームの堆積物に一般的に見られ,複合流によって形成される。3はフォアセット層理とも呼ばれる。
問題番号Ⅲ-32 正答番号4
問題番号Ⅲ-33 正答番号3
最も不適切なのは3。
- ◯。正しい。
- ◯。正しい。管に対して平行に測定すると管上では連続的な反射となる。確認としては良い。
- ☓。正しくない。高周波数だと分解能が高くなるので比例関係である。高周波数だと探査深度が浅くなる。
- ◯。正しい。
- ◯。正しい。
問題番号Ⅲ-34 正答番号4
- ◯。正しい。
- ◯。正しい。
- ◯。正しい。
- ☓。正しくない。孔内水位よりも浅い部分,金属保孔管内は測定できない。
- ◯。正しい。
問題番号Ⅲ-35 正答番号2
- ◯。正しい。
- ☓。正しくない。表面波探査はS波速度分布を求める探査方法である。
- ◯。正しい。
- ◯。正しい。
- ◯。正しい。