「天気の子」感想 ネタバレあり

舞台について

天気の子を見てきました.

君の名は。と比較されることも多いと思うのですが,個人的には君の名は。のほうが好きかなという感想です.これは多分多くの人が同意見な気がします.

なんで天気の子よりも君の名は。が好きなのか.いろいろ理由を考えたんですが,やっぱり私が舞台の東京と縁もゆかりもないからという考えに至りました.君の名は。のような田舎のほうがどちらかというと馴染みがあります.東京はどこが映っても東京だなという感想しかないのです.有名な建物とかは知っているわけですが,行っていたとしても一,二度なのでよく見知ったものではない.

エロゲ,世界系とのつながり

今回のストーリーはエロゲの真ルート,グランドルートみたいだと評するツイートなどが目立ちました.私もそう思います.

ただ映画自体は一つのルートでしかないし,我々は一つのルートしか見ていないわけです.それなのに別のルートの物語をすでに体験したように思わせられる.そういう不思議な作品ということです.

私も,ここはこちらに分岐するのではとあるいはここであの人が出てくるのではと予測しながら,あるいはすでに別の選択がされたあともあそこで別の選択をしていればと思いながら見続けていました.こんなの物語に集中することができるわけない.二回目,三回目はじめて物語に集中できるでしょう.

既視感をうまく使って,限られた尺である映画にここでいうようなグランドルートに値する鍵があるエンディングへと導くためには,こういう作りになったのではないかと考えます.一方で,そういう意図がなかったとして自分の描きたいものを打ち込んだ結果こういう意図しないことを思わせられる物ができたとしたら,それは新海誠監督が辿ってきた文化がそうさせたということです.

togetter.com

最後のエンドについて

Twitterにも書いたのですが,わりと自然に受け止めています.いいとか悪いとかあまり気にする方ではないし,人など地球の歴史から見たら最近に出てきただけの存在でしかなく,あれに匹敵するようなイベントは過去の何度も起きてきたと理解しているからです.

地質屋は,2つの相反する考えを自分の中に持っています.一つは.防災,地震,津波,火山などの自然災害の驚異とそれに対する人間への影響について.なんとかして被害を最小限にするために建造物を作ったり維持したり,予測したり,そして調査しています.一方で,そうした災害は人間にとっては重大でも過去を振り返ると歴史の一部でしかないし,もっと大きな被害が起きてきたことを知っています.小さな尺度と大きな尺度の2つがあるわけです.立場によってどちらが優先されるべきあるいは強いかは異なります.

ああいう風なEDになって,大変だという気持ちもあればまあそういうこともあるだろう.なぜなんだろうということを解き明かした意欲もあります.特殊な立場であると思います.

またそれほど衝撃がなかったのは雨が降り続くのは,隕石が落ちてくるとか津波が襲ってくるのと比べるとゆっくり被害が進行するということなのも理由かもしれません.

東京水没

3年後東京が水没していました.しかし雨が降り注いで,東京が水没するかは割と疑問があります.普通は,海水面が上昇したということは海水準変動が起きて海進したと考えます.そしてそれは汎世界的だと普通は思います.だが多分そうではなくて東京だけ水没させるためにはどうすればよいのか.ファンタジーといえば片付くのもまあ事実なので.

代償

一番見ながらハラハラしていたのが陽菜が代償になるのを無効化するために変わりの誰かを代償にする選択の物語になる可能性です.つまり帆高が須賀さんを拳銃で撃ち殺して代償にするとか,もっと別の誰かを見つけてその人にやってもらうなどです.拳銃を構えるたびに不安がよぎりました.そしてうまくいくまでループするとか.

もう一つありそうだと思っていていたのは,二人で代償を払って空の上で永遠に過ごしましたED.これもありそうでした.

前述したとおりそういう色々なストーリーが自然に思い浮かんでいく映画だったと言えます*1

追記

よく考えてみると本作はグランドルートだからこれで良かったのでしょう.私が思ったルートはグランドルートとしてはふさわしくない.

まとめ

個人的に好きがよく見られる本作品ですが,新海誠監督が作りたいものができたのであれば良いことかなと私は感じました.

補足

Vtuberのにじさんじ所属郡道美玲先生のツイキャスでかなり言いたいことが可視化された感があります.

twitcasting.tv

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*1:始めのほうは,陽菜が風俗落ちしていて帆高がボーイとして出会う地獄みたいな物語だという強い不安がありました