『心は孤独な数学者』という本がある。この本は、数学者で『国家の品格』を書いたの藤原正彦氏が、ニュートン、ハミルトン、ラマヌジャンの3人について取材をして書いている本だ。
筆者自身が、3人の生まれ育った場所や彼らについて書かれた文献などを綿密に調べ、彼らがどのように考えそして育ったのかを知る事ができる。
彼らの事について知りたい人は是非読むといい本である。また、彼らに興味のない人でも人の考え方について知る事ができる事から興味を持つ事ができるおもしろい本だと思う。
本題だが、インドの若くして亡くなった大数学者、ラマヌジャンについて書かれた項で知った事についてである。
ラマヌジャンは、多くの数学の公式や法則を考え出したが、その多くはなぜそんな事が思いついたのかわからない突拍子のないものだった。そしてそのような公式たちを信じられないほどたくさん考え出したのだが、その思考プロセスはいまだ明らかになっていない。
彼自身も、分かっていないようで誰かに確かな説明することなく死んでしまった。
この本では最後の方で、ラマヌジャンをよく知っているインドの数学教授ランガチャリ教授にラマヌジャンの独創的な考え方の源の見解を聞いている。
そこで、書かれていたのはインドのでは一般的な詠唱(チャンティング)に理由があるのではないかという事だった。詠唱とは、詩文などに単調なメロディをつけて歌う事である。
彼に言わせると、インドでは数学書であっても詩で書かれていたという事だ。
そして、長い間教科書でさえも、詩文で書かれていた。それは、国語だけでなく数学、理科、社会までの全てである。
教科書の詠唱の詩文の例を以下に書いておく。
「地球は太陽のまわりを
三百六十五日でぐるり
月は地球のまわりを
二十九日でぐるり
……」
日本語の九九と同じように、連想的に繋がった知識を覚えるのはインドでも有意義に使われているのだと知って驚いた瞬間だった。
- 作者: 藤原正彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/12/26
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