とくに研究とは関係していない論文等紹介するコーナー.
そもそも授業でLIPs (Large Igneous Province) について調べていた.対訳は大規模火成岩岩石区.
デカン高原の洪水玄武岩などが代表例である巨大な火成岩岩体がLIPsに当たる.古生代においてその火成活動と生物の絶滅イベントとが関係しているのではというのが読んでいた論文だ.
Kravchinsky, V. A. (2012). Paleozoic large igneous provinces of Northern Eurasia: Correlation with mass extinction events. Global and Planetary Change, 86, 31-36.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0921818112000082
上の論文は関係しているというのが結論である.古生代だけ,それもユーラシアを主として対応関係を見ているが,他の時代においても同様のイベントの一致が認められているらしい.
関連して以下の論文を読んだ.
Sheth, H. C. (2007). ‘Large Igneous Provinces (LIPs)’: Definition, recommended terminology, and a hierarchical classification. Earth-Science Reviews, 85(3), 117-124.
CiNii 論文 - 白亜紀における大規模火山活動と地球環境変動のリンク
上のがLIPsの定義について.読んだ限りこちらの方の定義は,かなり従来のものより範囲を広げて,なおかつ用語を追加して階層的区分を行っている.あと,面積が確か要件だった.
下の論文は,実際にLIPsと地球環境変動 (例えば海洋無酸素事変) が結びついてるのかを同位体比を用いてモニタリングしている.
最近LIPsについてそのものズバリの普及書がでたので買った.
地球を突き動かす超巨大火山 新しい「地球学」入門 (ブルーバックス)
- 作者: 佐野貴司
- 出版社/メーカー: 講談社
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最近ブルーバックスが積極的に地球科学系の本を出していてフットワークが軽い.大規模火成活動が起きると絶滅するのかということの真偽とかメカニズムはまだまだといった感じに思える.
海洋無酸素事変に伴って形成されたとみられる黒色頁岩について今度は調べ始める.海洋無酸素事変が,生物の絶滅や進化に関わっているというのは一般的なことらしい.
をとりあえず読んだ.読んだ限り白亜紀の間には何層も黒色頁岩があるというのがわかった.
- 作者: 平野弘道
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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に詳しく書いているそうなので読みたい.化石74号には海洋無酸素事変についての特集があるのでそちらにも目を通す予定.
www.palaeo-soc-japan.jp/download/Kaseki/Kaseki_online/No74.htm
少し話は変わるが北海道の根室層群では,白亜紀と古第三紀の境界であるK-P境界が見られる場所がある.
私は,あるイベントで行ったことがあるが,確かに黒色の頁岩が見られた.森の中の川の両岸に見られる.ちかくに熊の足跡があり,一人では行きたくない場所だ.
今白亜紀を研究しているので,海成の地層があれば,もしかしたら海洋無酸素事変に関連した黒色頁岩が見られるかもしれない.実際にそれが黒色頁岩であるのかを明らかにするためには炭素同位体比を調べないといけないが.
そういえば,凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪 (フィールドの生物学)を読んでいる.
凹凸形の殻に隠された謎: 腕足動物の化石探訪 (フィールドの生物学)
- 作者: 椎野勇太
- 出版社/メーカー: 東海大学出版会
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- メディア: 単行本
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作者の生き様が語られている本であるが,学部3年からドクターまでやったペルム系の地質調査が我々地質屋からしたら尊敬するべき熱心さにあふれていてまぶしい.現地での長期間の調査に加えて,エンジンカッターで石を切り,大量のサンプルを持ち帰り,室内でも検討する.この辺りは,すごいとしか言い様がない.おすすめな本である.