「地質 Advent Calendar 2014 - Adventar」の12月2日の記事です.
前回に続いて
薄片の話をします.
そういえば
薄片は,そもそもなんで薄くしなければならないのかについて話してなかったですね.物をひたすら薄くしていくと,大抵の物は光を通すようになります.もちろん岩石であってもそうです.光が透過するようになると,顕微鏡で観察しやすいというわけです.金属でも,同様に極限の薄さにすれば光を通します.
スライドガラスに固定したチップを研磨する
チップの時と同様に,回転するグラインダーで粗い目から削っていきます.一番重要なのが120番あたりの最も粗い目の段階です.ここでは,全体的な厚さを均一にしながら,光が通るくらいかなり薄くするというふたつのミッションがあります.天井のライトにすかしてみると,厚いところは色が濃く,薄いところは色が薄く見えるのでだいたい厚さがわかります.
しかし,いつも思うのですがどう考えてもこの段階からは職人芸に近いです.厚さの把握なんてよほど練習しないとできるようにはならないのが事実です.
うまくむらなく(片減りさせないという)擦るためには,チップにするとき2つの面を水平に切り出すこととグラインダー上で指一本で軽く押さえることで力のいれ具合を一定にすることが推奨されます.それでもできた厚い部分には,その部分を強く押さえることで部分的に薄くできるので,修正可能です.しかし,この修正もやり過ぎると今度は厚すぎた部分が薄すぎる部分へと変貌します.ゆっくりゆっくり丁寧に作る事が必要です.
擦りすぎを防止する方法としては,多少厚くても次の番目のグラインダーへ移ることです.最悪,厚くてもガラス板上でひたすら擦れば適切な厚さになります.
最後にガラス板上で1000,1500番の粉で研磨すれば偏光顕微鏡で見る用途としては完成です.分析用としてはこの後更に細かい粉で研磨する必要があります.
薄片にカバーガラスをかける
カバーガラスを薄片の上に貼ります.カナダバルサムなどで接着します.
どこまで薄くするか
偏光顕微鏡で見たとき石英ないし斜長石が二枚の偏光板を入れた状態で灰色の干渉色を示すようになれば良いと言われます.厚いと,灰色ではなくてオレンジとか鮮やかな色を示します.このあたりの厚さの調整は主にガラス板上で行います.
まとめ
薄片制作は厚さのコントロールが極めて重要ですが,それなりに高度な勘が必要とされるという"アナログチックな地質学"を代表するプロセスになっています.そのレトロ感がなかなかに素敵です.
地質学では,このような古典的手法(他だとポイントカウントとか岩相記載とか)が今も研究の一線であり続けており,デジタルとか分からないけれどアナログな事なら向いている人たちにとっての桃源郷に今後なっていくかもしれません.